成分分析ブランディング

成分分析ブランディング生産者のストーリー 魚伝編

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丁寧な手仕込みで魚の旨みを2倍引き出す「魚伝」の干物


日本の伝統食として馴染みの深い干物。古くから全国各地でつくられているイメージがありますが、業界のマーケット状況を見てみると、2002〜2016年の間に、市場規模は2,613億円から2.616億円と横ばいなのに対して、4〜29人の小規模の事業者数は33%減少(参考:経済産業省 2018年工業統計調査)。つまり、大量生産型の大手企業に押され、昔ながらの個人経営の店が廃業に迫られているという現状が見てとれます。

確かに大手の商品は値段も安く手に入りやすいですが、食べ比べてみると、一枚一枚手仕込みでつくられた干物とは全くの別物。この違いを証明し手づくりの魅力を再認識すべく、真鶴の老舗店とともに成分分析ブランディングが立ち上がりました。「おいしさ」という見えない価値を可視化してみると、興味深い結果が得られるとともに、そこから新たな活路も見えてきました。


120年あまり干物を自家製造販売する老舗

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明治10年の創業から140年あまり、神奈川県真鶴市で干物をつくり続けている「真鶴ひもの専門店 魚伝」。現在は、5代目となる青木良磨さんと、そのご両親である先代の良修さん、典子さんの3人を中心に切り盛りしている家族経営の干物店です。

代々受け継がれてきた丁寧な製法と秘伝の漬け汁によってつくられるサバやアジ、キンメダイなどの干物は、食通を唸らす逸品。商品は直営店以外はおもに百貨店の催事などで扱われており、地元だけでなく全国に多くのファンをもつ知る人ぞ知る名店です。


手間と時間をかけてつくられる魚伝の干物

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魚伝の干物づくりには随所にこだわりが見られます。

まずは、魚選びから。大手の水産加工業者はまとめて大量に仕入れるところ、魚伝では、目利きをし、厳選した魚のみを採用します。季節や気候などを意識しながら干物に最適な魚を選ぶのは、長年の経験と豊富な知識が不可欠です。

仕入れた魚は新鮮なうちに下処理が施されます。手際よく魚を開くと、ブラシを使って一枚ずつ血と内臓を洗っていきます。いっきにホースで水をかけて流すだけの店もあるなか、魚伝では、魚によってサイズも毛質も異なるブラシで細やかに処理。そうすることで、臭みを取りながら、旨みを残すことができるのです。

こうしてきれいに開いた魚を、伝統の漬け汁に漬け込みます。漬け汁は贅沢に取り替えるのでいつもフレッシュ。漬け汁を使い回す大量生産とは異なり、魚の臭みが漬け汁に残ることはありません。
最後は干し作業。魚の種類ごとに乾燥時間を絶妙に調整することで、ソフトでジューシーな食感に仕上げています。


成分分析で証明されたおいしさの違い

こうして大切につくられた干物がおいしくない訳はありませんが、それはあくまでも感覚的なもの。これを成分分析にかけて「おいしさ」を可視化していきます。

注目したのは、“旨み”と“臭み”。比較するのは、工場生産の国内大手メーカーA社の干物です。

まずは、旨みの成分である、イノシン酸とグルタミン酸を分析。するとイノシン酸およびグルタミン酸の含有量は魚伝の干物では4.38mmol/g、2.12mmol/gであり、工場生産の国内大手メーカーA社の干物の2.16mmol/g、1.30mmol/gと比較して、それぞれ2.03倍、1.63倍多い結果となりました。そして、魚の臭みの成分である過酸化脂質を調べてみると、魚伝の干物では83.13μg/gであり、工場生産の国内大手メーカーA社の干物の318.01μg/gと比較して73.86%低いことが分かりました*1。つまり、旨みが約2倍で臭みは半分以下という結果が得られたのです。

また、成分分析をする際は、個体差をならすために、3サンプル以上を検体として調べ平均値をとりますが、魚伝の干物はそれぞれの数値のブレが少なく、品質が安定していることも証明されました。
いずれの結果も想像以上。きめ細やかな手作業が、大量生産とは比べものにならないおいしさと高いクオリティを生み出していることが裏付けられる結果となりました。

*1:分析数値については小数点第3位を四捨五入し記載。倍率については、四捨五入しない数値を元に算出。


分析結果とブランディングが経営を底上げ

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大手のアジの干物が1枚100円ほどだったものに対して魚伝は500円。大手商品と差別化し独自のブランドを確立できているため、メディアでの露出が増えて新規顧客は順調に増加。コロナ禍で主戦場である百貨店の催事が減った状況でも、ネット通販などで全国からたくさんの注文が集まり、売り上げは好調です。

「これまでやってきたことが正しかったのだと数値が証明してくれることで、生産者のモチベーションにもつながりますよね。今まで以上に自信をもって商品をPRできるようになりました」と良磨さんは話します。
成分分析の結果をもとに、自社の干物を使った新しいブランドを立ち上げるなど、新たな挑戦にも取り組みはじめた魚伝。温故知新の精神で、今後も干物の魅力をさまざまな角度から発信し続けます。