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成分分析ブランディング生産者のストーリー 大森式流通編

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“あえて非効率なこと”に挑み魚の異次元の旨みを引き出す「大森式流通」


漁獲量の減少、魚価の低迷、後継者の不足、一般家庭の魚離れ…。こんな問題が叫ばれて久しい昨今ですが、この現状は悪化の一途をたどっています。実際に、全国の漁業従事者数は、2003年に23.8万人だったのに対し、2017年は15.3万人と、14年間で36%減少。漁業生産額も、1982年の2兆9,882億円から2007年には1兆6,539億円と、25年で45%も減少しています(水産庁 平成30年度 水産白書より引用)

さらに、大きな問題として注目を集めるのは海洋資源の枯渇。乱獲が原因で日本の漁獲量(海面漁獲量・遠洋漁業は除く)は、20年以上も減少し、2050年にはゼロになるペースで推移しています。大量に獲る漁業からの脱却が重要です。

そんな状況を打開すべく、漁業を量から質に転化させ、”よい処理をした人が勝つ未来の漁業をつくる”をモットーに、鮮魚卸業を営む「大森式流通」。目利きから提供まで各工程を徹底的に研究し最高の状態で届けられる魚は、異次元のおいしさだと、全国の高級料理店を中心に業界内で話題となっています。既存の市場では非効率といわれる作業をあえてすることで引き出される「大森式流通」の魚のおいしさは、成分分析によってもしっかりと証明されています。


職人技と手間を要する「神経〆」が味を大きく左右する

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宮城県石巻市にある「大森式流通」。小さな仲卸業者ですが、魚の目利きから下処理、保管、提供に至るまですべての工程に代表 大森圭さん独自の研究に基づく工夫を加え、同業他社と一線を画すポジションを築いています。

まず、仕入れは直接提携している信用のある漁師から。毎朝自ら一尾一尾目利きをし、とびきり状態のよい魚を探し出します。その後、これらの魚を活きたまま自社に運び、大森さん自ら下処理をするのですが、この工程こそが「大森式流通」の真骨頂。高い技術を要する「神経〆」という特殊な方法を用いることで、魚の死後硬直が始まるまでの時間を長くし、旨み成分の減少を抑えます。

ここまで丁寧な仕入れや処理をするだけでも大変な手間がかかりますが、届ける飲食店の料理や提供時間に合わせて、保存や梱包、提供の方法を変えているというから、その品質への飽くなき追求心には驚かされるばかりです。


同じ環境の魚と比べても「大森式流通」の魚の旨みは別格

とはいえ、魚は魚。物と鮮度がよければ下処理やその他の工程で味が大きく変わることなどないのでは?と思う人もいるかもしれませんが、成分分析はそんな疑念を一蹴します。

比較したのは、「大森式流通」と同じ海で同じ日に獲れた同じ魚。ただし、一般的に行われている「野締め(氷締め)」で処理されたもので比べます。「野締め」は、釣れた魚を冷たい潮氷(氷入りの海水)に入れて凍死させそのまま鮮度を保つ方法で、大量の魚をいっきに処理できるので、「神経〆」と比べると圧倒的に簡単で、手間も時間もかかりません。

両者をサンプルとし、旨み成分であるイノシン酸とグルタミン酸の数値を比較すると、「大森式流通」が神経〆処理したヒラメは425.6mmol/100g、70.7mmol/100gであり、野締めしたヒラメの15.4mmol/100g、52.3mmol/100gと比較して、それぞれ27.64倍、1.36倍多いという結果となりました*1。特にイノシン酸においては大森式流通が神経〆処理したヒラメは約27倍以上も含有量が多いという驚愕の数値を叩き出したものもありました。

*1:分析数値については小数点第3位を四捨五入し記載。倍率については、四捨五入しない数値を元に算出。


獲ったもん勝ち漁業からよい処理したもん漁業を目指す

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「自分の魚に絶対の自信はありましたが、この結果には、自分がやってきたことが間違ってなかったと背中を押してもらった気分です」と大森さん。

さらに、「現状では、手間ひまをかけて処理をした旨い魚でも、それが市場に出たときに、必ずしも価格が上がるとは限りません。大量に漁獲された魚を流通させる、いまの水産流通からすると、これは非常に非効率なことです。しかし、”よい処理をした人が勝つ未来の漁業をつくる”ためには、あえてそんな非効率に挑みたい。処理の仕方で価値を高めて売る、そんな新しい方法を実証したいんです」と熱く語ります。

魚価が低迷しているからこそ、漁業者は大量に漁獲することに奔走していますが、このまま量を追求し続けることに、生態系や漁業にとっての未来はありません。「大森式流通」は、漁師や消費者、そして環境にとっても理想的な漁業のあり方を今後も模索し体現していきます。